念願のマンションを購入しました。リビングは南向きで、大きな掃き出し窓で仕切られたベランダもそこそこの広さです。隣とは避難時破って通れるパネルで仕切られており、気になることもありません。今から30年近く前の話です。入居者もみんな若く、我が家も幼稚園に行くか行かない男の子と女の子の四人家族。右隣もやはり同じような子供のいる家庭。特段の付き合いはなくあいさつ程度の関係でした。ある日、リビングでゆっくりしようと思い、お茶を持って入っていくと、窓に女の人が窓にへばりついて何か叫んでいました。あまりに異様な光景に、びっくりして逃げようかと思いましたが、よく見ると隣の奥さん。事情がよくつかめないまま、まずは窓を開けて奥さんを中に入れました。 しばらくは奥さんも話ができない状態でしたが、少し落ち着きを取り戻して、事の顛末を聞くと、ベランダで洗濯物を干している間に、子供さんが窓のカギを閉めてしまったとのこと。窓のカギは小さな子供にとっては、動きが面白く、おもちゃをいじるような感覚で開けたり閉めたりして遊ぶことはよくあります。 そして運悪くお母さんがベランダにいるときに、いじっていた窓のカギが閉まってしまったとのことでした。いくら叫んでも、幼児には開けることもかなわず、意を決して隣の家、つまり私の家のベランダへの脱出を試みたというわけです。驚いたのは、ベランダの仕切りの避難用パネルを破らず、手すりの外側を伝ってきたということです。2階だとは言え、落ちれば怪我は必須。決死の脱出劇は無事成功裏に終わりましたが、今でも忘れられない出来事です。